会長あいさつ

大阪狭山市果樹振興会の
東威男会長に聞きました

大野ぶどうには
生産者のこだわりが
詰まっています

果樹は木に実がなるので、成長過程を見届けられるのは楽しいものですが、庭木と違い、商品の果実に仕上げるにはものすごく手間がかかります。その最上位にあるのが「ぶどう」ではないかと思います。ぶどう栽培においていちばん大変な仕事が「種なし」にすることなんです。
これだけ種なしぶどうが主流になっていると、種のない品種があるのだろうと思われるでしょうが、ぶどうの粒には必ず、種ができるため、成長の過程で種を作らないような処理をしないといけません。これをジベレリン処理といい、具体的にはジベレリンという薬剤を容器に薄め、ひと房ずつ手作業で浸していきます。

1回目は開花2週間前、2回目は満開後10日以内に行う必要があり、タイミングを逃すと十分な効果が得られません。そのため、短期間でやり終えていきますが、無数にぶら下がっているぶどうを見ると、しばし気が遠くなることも(笑)。2回目はジベレリン液を噴霧するため、1回目よりは楽ですが、棚を見上げての作業はやはりしんどいものです。
このほか、土づくりや枝のせん定、粒の間引きなど、機械化できない作業が1年を通してたくさんあります。このような苦労を重ね、ようやくおいしいぶどうが出来上がります。

現在、大野ぶどうは市場には出ず、直売所でしか手に入りません。そういう意味では希少価値があり、そのことを生産者も感じているので、みなさん力を入れて作っています。房や粒の大きさだけでなく、糖度にもこだわり、完熟するまで待って収穫します。生産者がひと房ずつ吟味しているため、大野ぶどうにハズレはないと自信を持って言えますね。

ここは都会に近い栽培地にしては、耕作面積はそれほど減っていません。私のように定年退職したリタイヤ組が頑張っていることも大きいですが、廃業の危機に直面している園がないわけではありません。なんとか現状継続できるよう、次の人にバトンタッチしやすいしくみを考えていきたいと思います。